今回の「伝えたいこと…2」では 保護者の方や教師をされている方にぜひとも読んでほしい。

まず初めに 断っておきますが 私とこれから紹介する方 戸塚 宏(戸塚ヨットスクール校長)氏とは まったく面識はありませんし 以前テレビやニュースで話題になったことを持ち出し とやかく言うつもりも毛頭ありませんので先に申しておきます。

そう!それは以前 戸塚校長と親交があった日野 晃先生から直接聞いた話だ。

で その時の話はこうだった …前にテレビやニュースでものすごく騒がれた「戸塚ヨットスクール」っていうところは ほんまはヨットのチャンピオンを育成する ちゃんとしたヨットスクールやったんやで!それで たまたま一人の問題児を預かって それが見違えるように更生して社会復帰しよったらしい。で そんな噂を聞いた問題児(不登校や家庭内暴力などの情緒障害児)を抱える親達がうちの子もお願いします…って子供を預けだしたらしい!でもその中にはなぁ まったく面会にも来ず 放ったらかしの親も多々いたらしいわ…で そんな中で たまたまあんな事故が起きたんやで…あれはほんまに事故やったんや…

私は その時初めて真相を知って愕然としたのを覚えている…でもそれと同時に 一応私も武道を指導する教育者の端くれとして 戸塚校長の考え方や方針にものすごく興味をもち いろいろ調べていると ほんとうに学ぶべきところや共感するところが多々あり やっぱりそうなんや!と喜び 納得したのです。それで今回 ぜひみなさんにも知ってもらいたい!とここに取り上げさせていただいたしだいです。

で ここに紹介するのは 2003年に発行された「暮らしの手帖」特別号で 題は「叱る!」の中から 戸塚校長が書いた「感情のままに、叱り、誉める」です。



感情のままに、叱り、誉める
  


「子供を叱るのは悪」であるという人が多い。では、どうして叱るのがいけないかというと、「皆がそう言っているから」なんですね。じゃあ、最初にそう言い出した人は誰か。犯人は「アメリカ」です。
「叱る」は善です。「誉める」も善。しかし、その使い方によって、どちらも悪になることがあるから気をつけなければなりません。

欧米型精神論の間違い

ところで、教育崩壊が生じたのはどうしてでしょうか?それは、教育の本になる「精神論」が間違っていたからです。戦後、それまでの精神論を悪いものとして捨て去り、欧米型の精神論を導入しました。その時その精神論を充分に検討することなく、「正しいに決まっている」として受け入れたのです。舶来物には反射的に頭を下げてしまう。日本人の欠点です。欧米型の精神論は、どこか胡散臭いと思いませんか?美辞麗句が並び過ぎている。一例を挙げてみましょう。「全ての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利について平等である。理性と精神を授けられており…」(世界人権宣言第1条)大変美しい言葉ですが、ウソです。「自由」「尊厳」「権利」「平等」「理性」「良心」、全てあるものではなく「創る」ものだからです。とくに、理性が「ある」とするのは、教育にとって致命的です。なぜなら、教育とは「理性を創る」ことだからです。生まれながらに理性があるなら、教育する必要もありません。
欧米流の精神論はあと二つ大きな欠点を持っています。まず第一は、「本能論(進化論)」が無いこと、第二は、理性は「知」のみと考え、「情」「意」が欠けていることです。
「意」は、自由意志などの言葉で時々出てきますが、「情」はまるで悪者あつかいです。このアンバランスは当然のごとく教育に現れ、意思と感情のトレーニングは放ったらかし。無気力、無感動、無表情の子供ができる理由です。あなたは幸福になりたいですか?感動したいですか?それなら感情をトレーニングして強くしなくてはなりません。なぜなら、幸福も感動も感情だからです。

叱れば”進歩する

我々の行動は必ず目的を持って行われます。そして、それが正しい、善なる行動なら、目的を達成した時に快感が湧いてきます。これが幸福です。
「叱る」という行為にも、当然、目的があります。それは、子供の進歩です。叱るのは、その為の手段です。
「快を求め、不快を避ける」−これが、行動と感情の関係です。子供は進歩しなければなりません。進歩する為には行動しなければなりません。肉体的進歩の為には肉体的な行動を、精神的進歩には、精神的行動を。この「行動」のことをトレーニングと言います。そして、行動(トレーニング)は不快感によってなされます。
人間を、進歩のためのトレーニングに導く不快感は「恥」です。問題なのは、子供はまだ恥をかく能力が低いということです。そこで、大人が子供に恥をかかせてやります。これが「叱る」ということです。だから、子供が頼りにしている、あるいは尊敬している人に叱られるのが、一番よく効きます。先生が生徒と友達では、効果がありません。

感情のままに、叱り、誉める

叱るということの目的を忘れてはなりません。大人のうっぷん晴らしではないのです。叱ると子供は、精神的に段々安定してきます。強くなるからです。
安定する理由は二つ。
まず一つは、大人が本気になって自分を進化させようとしている と、確認できるから。子供はまだ弱い存在なので、大人に守られて、それも、親しい人たちに守られていることが分かれば、安定します。そして、叱る人を尊敬するようになります。強い者が弱い者を叱るのですから、正しく叱られると相手の強さを確認することができ、尊敬の対象となるのです。
二つ目は、叱られて、正しい行動をして進歩すると、子供自身が強くなり、安定するのです。その反対の子供たちが町にはあふれていますよね。
「誉める」には、叱るよりもっと難しい。この手段は間違って使われやすく、間違うと子供は進歩するどころか停滞、更には退歩してしまうことがあります。我々のスクールにやってくるのは、ほとんどがこのタイプです。
「叱るより誉めろ」などとはとんでもない。誉めるときは誉める。叱るときは叱る。二つは機に応じて使い分けるべきものです。誉めるか叱るかを決定するのは感情です。子供が何かの行為をする。その結果を知った時、快感が湧いてきたら誉める。不快感が湧いてきたら叱る。それで良いのです。あとは、「どの程度」という量の問題です。

正しい精神論の確立を!

私は儒教の本を読んでみて、欧米精神論の欠陥がちゃんと埋まっているのを知りました。
理性は「知、情、意」からなること。理性は「創る」ものであること。そして本能を重視すること。何よりも、「真理」とは何かを、二千五百年前に解明しています。そして、原始仏教も同じでした。ともに、実に科学的です。
この二つを利用して、現代に合う、新しい精神論を創れば、教育は正常化することでしょう。















最後にそうそう!こんな話もしていただきました。

日野先生の自宅に 戸塚氏が訪ねて来られ 最近(戸塚スクールでの事故の後)マスコミその他が 戸塚理論を攻撃し始めたので 以前のような指導ができなくなってきました。で 日野さん 今後はどのような指導(トレーニング)をさせたら良いのでしょうかねぇ…とおっしゃるので 日野先生が そうですねぇ!いっそ山へ連れて行って 放ったらかし(放置)にしとくっていうのはどうでしょうかねぇ…と言って二人で大笑いしてたんや。と…

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伝えたいこと…

戸塚 宏(戸塚ヨットスクール校長)

昭和15年生まれ、名大工学部卒、昭和50年 太平洋単独横断ヨットレースで、サンフランシスコ〜沖縄を42日間で驚異的記録で優勝。52年に戸塚ヨットスクールを開校。不登校、家庭内暴力なのど情緒障害児を600人以上更生した。昭和58年に戸塚ヨットスクール内での事故から「事件」に発展し、懲役6年の実刑が確定した。その後 平成14年3月29日より服役し平成18年に出所。現在もヨットスクールで校長を務める。著書に「私が直す」、「敵は脳幹にあり」、熱論・戸塚宏」などがある。